電動歯ブラシに替えたのに、歯科検診で磨き残しを指摘された。手磨きのほうがきちんと磨けていた気がする。——電動に替えた人がいちど通る迷いです。ネット上には「電動のほうがきれい」「歯医者は手磨き」と真逆の意見が並んでいて、どちらを信じればいいのか分かりません。
結論から言うと、電動歯ブラシと手磨きは「勝ち負け」ではなく、得意な場所が違う道具です。しかもその得意・不得意は、厚生労働省の e-ヘルスネットにはっきり書かれています。この記事では、公開されている解説の記述をそのまま引きながら、どちらを、どこで、どう使い分ければいいのかを整理します。
- 基本は「歯ブラシによる歯みがき」。電動歯ブラシは併用して効果を上げるもの、と位置づけられています
- 電動が優れているのは歯面の研磨効果。逆に歯間部や隣接面の清掃効果は低いと明記されています
- だからフロス・歯間ブラシの併用は必須。電動に替えても省けません
- 3分以内にとどめることが推奨。長く当てるほど良い道具ではありません
- 動かし方は種類で違います。普通・音波は当てるだけ、超音波は手磨きと同じように横に動かす
- 超音波はプラークそのものを落とす力は強くないとされ、仕上げに手磨きを足す使い方が示されています
「どちらが上か」ではなく、基本と併用という書き方になっている
厚生労働省の e-ヘルスネットには「歯みがきを助けるもの(電動歯ブラシ・歯磨剤・洗口液)」という解説があります。タイトルからして、電動歯ブラシは歯みがきを「助けるもの」の側に分類されています。冒頭の一文はこうです。
プラークコントロールは歯ブラシによる歯みがきが基本ですが、電動歯ブラシや歯磨剤・洗口液を併用すると効果が上がると考えられます。またプラークの付着を防止する効果が期待できます。
「電動のほうが優れている」でも「手磨きのほうが確実」でもありません。歯ブラシによる歯みがきが基本で、電動歯ブラシはそこに併用して効果を上げるもの、という整理です。電動に替えたら手磨きの技術がいらなくなる、という前提がそもそも置かれていない、と読めます。
そもそも取り除きたいプラーク(歯垢)がどういうものかも、同じサイトに定義があります。プラークは口の中の常在菌とその産生物からなる白く柔らかな沈着物で、食後数時間で形成され、1mgの中に10億個以上の細菌が存在するとされています。粘着力があって水に溶けないため、うがいだけでは取り除けず、歯ブラシを使って機械的に除去することが基本と説明されています。
電動が勝つ場所と、負ける場所が同じ一文に書かれている
使い分けを考えるうえで、いちばん重要なのが次の一文です。
歯ブラシに比べて歯面の研磨効果は優れていますが、歯間部や隣接面の清掃効果は低いので、プラークコントロールを高めるには、歯間ブラシやデンタルフロスの併用が必要になります。
1つの文のなかに、勝ちと負けが両方入っています。整理するとこうなります。
| 場所 | 電動歯ブラシ | 公的解説の記述 |
|---|---|---|
| 歯の面(表・裏・噛み合わせ) | 得意 | 「歯ブラシに比べて歯面の研磨効果は優れています」 |
| 歯と歯の間・隣接面 | 不得意 | 「歯間部や隣接面の清掃効果は低い」 |
| 歯と歯の間(補助道具) | —— | 「歯間ブラシやデンタルフロスの併用が必要になります」 |
手磨きの側にも同じ趣旨の記述があります。歯間部清掃の解説では「歯ブラシによる清掃は、歯の表裏や噛み合わせの清掃には非常に有効な方法であるものの、歯と歯の間の清掃には十分ではありません」とされています。
つまり歯と歯の間が弱いのは、電動でも手磨きでも同じということです。ここで差がつくのは電動か手磨きかではなく、フロスや歯間ブラシを使っているかどうかになります。使い方はデンタルフロスの正しい使い方と歯間ブラシの使い方と選び方にまとめています。
種類によって、手の動かし方が変わる
「電動歯ブラシ」とひとくくりにされがちですが、解説では振動数で呼び分けられています。音波歯ブラシは20〜2万Hz、超音波歯ブラシは2万Hz以上です。そして、動かし方の指示が種類で分かれています。
普通の電動歯ブラシ・音波歯ブラシ
ブラシを水でよく湿らせ、歯と歯ぐきの境目に毛先を軽く当てます。3〜5秒当てたら隣にずらす——これを磨き残しのないように順番に繰り返します。自分で横に動かす必要はありません。
超音波歯ブラシ
同じく湿らせて境目に当てますが、こちらは普通の歯ブラシのように横に細かく動かします。手磨きの動作がそのまま要る、ということです。
どちらの場合も
歯と歯の間の清掃には、歯間ブラシやデンタルフロスを使います。
ここが「電動に替えたのに磨き残しが増えた」の原因になっていることがあります。当てるだけでいい機種と、自分で動かす必要のある機種があるのに、同じ持ち方で使っているケースです。手元の機種がどちらなのかを取扱説明書で確認するのが先になります。当て方そのものは電動歯ブラシの正しい使い方で詳しく扱っています。
もうひとつ、超音波についてはこう書かれています。「超音波歯ブラシにはプラークそのものを除去する効果はあまりないといわれていますので、使用後、歯面から剥がれたプラークを歯ブラシで取り除くのもいいでしょう」。仕上げに手磨きを足す、という組み合わせが公的な解説の側から示されているわけです。
長く当てるほど良い、ではない
時間についての記述もはっきりしています。
電動歯ブラシはあまり長い間使用すると歯面や歯肉を傷つけてしまう可能性があるので、3分以内の使用にとどめることが推奨されています。
手磨きで「しっかり磨く」と言えば時間をかけることを指しますが、電動では逆方向の注意が入ります。歯面の研磨効果が優れているという長所が、そのまま削りすぎのリスクにつながるためです。歯ぐきが下がってきた、血が出る、しみる——といった症状が出ているなら、時間と力の両方を見直す段階です。それぞれ歯茎が下がる原因と当て方・力加減、電動歯ブラシで血が出るのはなぜ、電動歯ブラシで歯がしみるにまとめました。
歯磨き剤についても一言添えられています。電動・音波の手順には「歯磨剤を付けるなら少しだけにします」とあります。研磨剤との関係は電動歯ブラシに歯磨き粉は必要?で扱っています。
結局、どう使い分けるか
ここまでの記述をそのまま組み立てると、次の形になります。
| 担当する場所 | 使う道具 | 根拠 |
|---|---|---|
| 歯の面をまとめてきれいにする | 電動歯ブラシ(3分以内) | 歯面の研磨効果は歯ブラシより優れている |
| すき間の小さい歯と歯の間 | デンタルフロス | 隙間の小さい歯間部清掃にはフロスが有効 |
| すき間のある歯と歯の間 | 歯間ブラシ | 隙間のある歯間部清掃には歯間ブラシが便利 |
| 超音波を使ったあとの仕上げ | 手磨き(歯ブラシ) | 剥がれたプラークを歯ブラシで取り除くのもよい |
歯間ブラシを選ぶときは、解説に「歯や歯肉を痛めないために、歯の隙間より少し小さめのものを選ぶ」とあります。かかりつけ歯科医院でアドバイスを受けるのもよい、とも添えられています。
手磨きに完全に戻すべきか迷っているなら、判断材料は「どちらが上か」ではありません。歯の面・歯と歯の間・仕上げの3つが毎日埋まっているかです。電動に替えて時間が短くなり、そのぶんフロスに回せているなら、電動へ替えた意味があります。逆に電動だけで済ませてフロスをやめたなら、歯と歯の間は前より汚れています。
電動歯ブラシそのものへの疑問は電動歯ブラシのデメリットは?、選ぶ段階の基準は電動歯ブラシの選び方、替えブラシの交換時期は替えブラシ交換時期は?、本体の寿命は電動歯ブラシの寿命は何年?で扱っています。毎日の組み立て全体は毎日のオーラルケア完全ガイドをどうぞ。
よくある質問
Q. 電動歯ブラシと手磨きは、どちらがきれいに磨けますか。
A. e-ヘルスネット(厚生労働省)は「プラークコントロールは歯ブラシによる歯みがきが基本ですが、電動歯ブラシや歯磨剤・洗口液を併用すると効果が上がると考えられます」としています。どちらか一方が上という書き方ではなく、歯ブラシによる歯みがきを基本に置いたうえで、電動歯ブラシは併用して効果を上げるもの、という位置づけです。
Q. 電動歯ブラシが手磨きより優れている点はどこですか。
A. e-ヘルスネットは「歯ブラシに比べて歯面の研磨効果は優れています」としています。歯の面をきれいにする力の話です。一方で同じ文に続けて「歯間部や隣接面の清掃効果は低い」とも書かれており、得意な場所と不得意な場所が分かれています。
Q. 電動歯ブラシを使えばフロスや歯間ブラシは要りませんか。
A. 必要です。e-ヘルスネットは「プラークコントロールを高めるには、歯間ブラシやデンタルフロスの併用が必要になります」と明記しています。歯と歯の間のプラークはブラッシングでは取り除くことが困難だと説明されています。
Q. 電動歯ブラシは何分まで使っていいですか。
A. e-ヘルスネットは「電動歯ブラシはあまり長い間使用すると歯面や歯肉を傷つけてしまう可能性があるので、3分以内の使用にとどめることが推奨されています」としています。長く当て続けるほど良い、という道具ではありません。
Q. 超音波歯ブラシは手磨きのように動かすのですか。
A. はい。e-ヘルスネットは、普通の電動歯ブラシや音波歯ブラシは「歯に当てるだけで一歯ずつずらしていきます」、超音波歯ブラシは「手動の歯ブラシと同様に自分で細かく横に動かして使います」と、動かし方を分けて説明しています。
Q. 手磨きに戻したほうがいい場合はありますか。
A. e-ヘルスネットは、超音波歯ブラシについて「プラークそのものを除去する効果はあまりないといわれていますので、使用後、歯面から剥がれたプラークを歯ブラシで取り除くのもいいでしょう」としています。使う機種によっては、手磨きを仕上げとして組み合わせる形が示されています。
出典
- e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯みがきを助けるもの(電動歯ブラシ・歯磨剤・洗口液)」
- e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯間部清掃(デンタルフロス・歯間ブラシ)」
- e-ヘルスネット(厚生労働省)「プラーク / 歯垢」
本記事は上記の公開解説の記述を整理したものです。磨き方や道具の選択は口の状態によって変わるため、個別の判断はかかりつけの歯科医師・歯科衛生士にご相談ください。出典リンクの表示確認:2026年9月17日。
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