電動歯ブラシで歯がしみる。知覚過敏の原因と、やめずに続ける方法

電動歯ブラシと氷水のグラスが並ぶ洗面台
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電動歯ブラシに替えてしばらくしてから、冷たい水を含んだときや歯ブラシが当たったときに「ツッ」としみる。この時に多くの人が最初にする判断が、電動歯ブラシをやめて手みがきに戻すというものです。ところがこれは、知覚過敏の仕組みから見ると悪化させる方向に働くことがあります。この記事では、知覚過敏がなぜ起きるのかを日本歯科医師会の解説から整理し、電動歯ブラシを使い続けながら痛みを減らすための実際の手順を書きます。

この記事の要点

  • 知覚過敏は「一過性の痛み」で、歯肉退縮の場合の持続時間は長くても1分以内とされている
  • 原因は電動歯ブラシではなく象牙質の露出。露出の経路は歯肉退縮・破折・すり減り・酸蝕・むし歯治療後・ホワイトニングの6通り
  • 象牙質が露出していても、必ずしみるわけではない。象牙細管が加齢で塞がると痛みは起きない
  • しみるからと歯みがきを控えるとプラークが付き、酸で表面が溶けて知覚過敏はむしろ悪化しうる
  • 予防の柱は歯周病の予防と、歯肉の退縮が進みやすいような不適切な歯みがき法をしないことの2つ

結論:やめるのではなく、当て方と力を変える

先に答えを書きます。しみるからといって歯みがきを控えるのは、知覚過敏に対して逆方向の対処です。日本歯科医師会が運営するテーマパーク8020は、露出した象牙質について次のように説明しています。

露出した象牙質は歯みがきでも痛みを感じやすくなっていますが、歯みがきを十分に行わないとプラークが付着します。プラーク中にはむし歯菌がいて、酸を作りその歯の表面を溶かしています。(中略)こうなると知覚過敏はむしろ悪化することも考えられます。知覚過敏の改善にも歯みがきはとても重要です。(日本歯科医師会「テーマパーク8020」知覚過敏

変えるべきなのは、みがくかどうかではなくどう当てるかです。電動歯ブラシは自分で動かす必要がないぶん、手みがきの癖のまま押し当てると力が一点に集中しやすくなります。当て方・動かし方・時間を先に直すのが順番です。

知覚過敏とは何か。まず定義を確認する

テーマパーク8020は知覚過敏を次のように定義しています。

知覚過敏とは、歯ブラシの毛先が触れたり、冷たい飲食物、甘いもの、風にあたった時などに歯に感じる一過性の痛みで、特にむし歯や歯の神経(歯髄)の炎症などの病変がない場合にみられる症状を言います。

ポイントは2つあります。1つは一過性であること。もう1つはむし歯や歯髄の炎症がない場合を指すこと。つまり「しみる=知覚過敏」ではなく、しみる症状のうち病変がないものが知覚過敏です。正式には象牙質知覚過敏症といいます。

痛みの持続時間についても目安が書かれています。歯肉が下がって象牙質がむき出しになった場合について、テーマパーク8020は「持続時間は長くても1分以内で、時間が経てば痛みは消失します」としています。1分を大きく超えて痛みが残るなら、知覚過敏の枠を外れている可能性があります。

なぜしみるのか。象牙質と象牙細管の関係

歯の最表層にあるエナメル質は、削っても痛みを感じません。痛みを感じるのはその内側にある象牙質です。テーマパーク8020は「象牙質は器具でこすったり、冷たいものや熱いもの等に触れると、その刺激は内部の神経に伝達されて、歯は痛みを感じます。つまり象牙質は痛みを感じる部分です」と説明しています。

刺激が神経まで伝わるのは、象牙質の中に無数の小さな管状の構造物があるためです。ここに重要な但し書きがあります。

この小さな空隙は加齢などにより、少しずつ塞がってくることもあります。このような場合には知覚過敏は起きません。したがって象牙質が露出している時には必ず知覚過敏が起きるということではありません。

歯茎が下がっている人が全員しみるわけではないのはこのためです。逆に言えば、しみ始めたということは、露出した象牙質の管が開いた状態にあるということになります。歯茎が下がる原因と当て方もあわせて確認してください。

象牙質が露出する6つの経路

テーマパーク8020は、象牙質が露出する経路を6つに分けて説明しています。自分がどれに当たるかで、やるべきことが変わります。

経路 何が起きているか 自分でできること
歯肉退縮(加齢・歯周病) 歯肉の位置が下がり、歯根が露出して象牙質がむき出しになる 歯周病の予防。歯肉の退縮が進みやすい不適切なみがき方をしない
破折 打撲などで歯が割れて象牙質が露出する。残った歯に亀裂が入っていることもある 受診。亀裂から細菌が入って炎症を起こすことがある
すり減り(咬耗) 使っているうちにエナメル質が減り、象牙質が露出する 食いしばり・歯ぎしりの自覚があれば相談する
酸蝕 酸性の飲食物でエナメル質が溶ける。エナメル質はpH5.5程度で溶け始める 酸性のものを長時間かけて口に入れ続ける習慣を見直す
むし歯治療の後 歯を削る処置そのもので神経が痛みを感じやすくなる 経過を見る。治療した歯科医院に相談する
ホワイトニングの後 薬剤の影響で一時的に軽度の知覚過敏が起きる ホームホワイトニングは1〜2日中断すれば症状は消えるとされる

酸蝕について、テーマパーク8020は「私達の日常で口にする食べ物や飲み物の多くは酸性です」としたうえで、炭酸飲料を長時間かけて飲むような習慣や、酸っぱい飲み物や食べ物を頻繁にかつ長時間摂取するような習慣を具体的に挙げています。何を口にするかより、口の中が酸性である時間の長さが効いてくるという整理です。日本歯科医師会の別ページでも、酸蝕として果物や清涼飲料水に含まれる酸がエナメル質等にダメージを与えることが挙げられています。

電動歯ブラシを使い続けながら痛みを減らす手順

原因が象牙質の露出である以上、対処は「露出部への刺激を減らす」と「露出を進めない」の2方向になります。順番に進めます。

1
押し当てるのをやめる

電動歯ブラシは振動や回転で汚れを落とす道具なので、押し付ける力は不要です。歯面に軽く触れる程度に当てて、1本ずつゆっくり移動させます。手みがきの「ゴシゴシ」の癖が残っていると、露出した歯根に一番強く当たります。

2
しみる歯だけ最後に回す

しみる歯を最初にみがくと、そこで痛みが出て全体のみがきが雑になります。痛みの出ない歯から始めて、しみる箇所は最後に短時間で当てると、口全体のプラーク除去量が落ちにくくなります。

3
歯みがき剤の成分を見る

硝酸カリウムを含む歯みがき剤は、神経の周囲のカリウムイオンを増やして神経の細胞を興奮しにくくする仕組みで、継続して使うことで改善効果があることが確かめられているとされています。即効性を求める場合は、歯科医院で露出部を封鎖する処置のほうが効果が高く即効性もあるとされています。

4
研磨剤の量を確認する

すり減りによる露出が疑われる場合、研磨剤の使い方も見直しの対象になります。電動歯ブラシと歯みがき剤の組み合わせは研磨剤の落とし穴と正しいつけ方で整理しています。

5
酸性のものを口に入れている時間を短くする

やめる必要はありません。だらだら飲まない、口に含み続けないという時間の管理です。

6
1分を超える痛みが続くなら受診する

知覚過敏は一過性の痛みです。持続時間が比較的長い場合や痛みが非常に激しい場合は、歯の神経に炎症などの変化が起きていることも疑われるとされています。

しみるのを我慢して続けてよい場合と、受診すべき場合

判断の境目を整理します。

状態 どう考えるか
刺激が当たった瞬間だけ痛み、1分以内に消える 知覚過敏の典型的な出方。当て方と力を見直しながら継続する
痛みが長く続く/非常に激しい 歯の神経に炎症などの変化が起きていることも疑われる。受診する
何もしていなくてもズキズキする 一過性ではないため知覚過敏の定義から外れる。受診する
歯ぐきから血が出るのも同時に起きている 歯肉炎・歯周病の可能性。血が出る場合の判断を参照のうえ、続くようなら受診する
打撲や硬いものを噛んだ後から始まった 破折や亀裂の可能性がある。受診する

テーマパーク8020は、冷たい水でしみる症状がむし歯の進行や歯の亀裂でも起きるとしたうえで、自分では区別しにくいので早めの受診を勧めています。迷ったら受診、が最も確実です。

なお、電動歯ブラシを使っていない場合も含めた「しみる」全般の見分け方は冷たいものが歯にしみる原因は?知覚過敏と虫歯の見分け方・対処法で扱っています。本記事は電動歯ブラシを使っている場合に絞って、続けるか・やめるかの判断を書いています。

まとめ

要点

しみる原因は電動歯ブラシではなく、象牙質が露出して刺激が神経に届いていることです。露出の経路は6通りあり、加齢や歯周病による歯肉退縮が代表的です。しみるからと歯みがきを控えるとプラークが付き、酸で表面が溶けて知覚過敏はむしろ悪化しうると説明されています。やめるのではなく、押し当てる力をやめて当て方を変え、酸性のものが口の中にある時間を短くする。それでも1分を超える痛みが続く場合は受診してください。

よくある質問

電動歯ブラシを使い始めてから歯がしみます。使うのをやめるべきですか。

しみる原因は電動歯ブラシそのものではなく、露出した象牙質に刺激が届いていることです。日本歯科医師会のテーマパーク8020は「知覚過敏の改善にも歯みがきはとても重要です」とし、みがきを十分に行わないとプラークが付着し、その酸で歯の表面が溶けて知覚過敏はむしろ悪化することも考えられると説明しています。やめるのではなく、当て方と力を見直してください。ただし痛みが長く続く場合や激しい場合は歯科医院を受診してください。

知覚過敏とむし歯の痛みはどう見分けますか。

自分で見分けるのは難しいとされています。テーマパーク8020は、冷たい水でしみるという症状はむし歯がある程度進行した場合にもみられ、歯に亀裂が入っている時にも同じような症状がみられることがあるとしたうえで、「自分では知覚過敏であるのか、むし歯などによる痛みであるのかは分かりにくいですから、早めに歯科医院で受診することをおすすめします」と案内しています。

知覚過敏の痛みはどのくらい続きますか。

テーマパーク8020は知覚過敏を「一過性の痛み」と定義し、歯肉が下がって象牙質が露出した場合の例として「持続時間は長くても1分以内で、時間が経てば痛みは消失します」と説明しています。痛みの持続時間が比較的長い場合や非常に激しい場合は、歯の神経に炎症などの変化が起きていることも疑われるとされています。

象牙質が露出していたら必ずしみますか。

必ずではありません。象牙質が刺激を神経に伝えるのは、内部にある無数の小さな管状の構造物によります。テーマパーク8020は「この小さな空隙は加齢などにより、少しずつ塞がってくることもあります。このような場合には知覚過敏は起きません」としており、象牙質が露出していても知覚過敏が起きるとは限らないと説明しています。

一度しみるようになったら、もう治りませんか。

軽度のものは自然に軽くなることがあります。テーマパーク8020は「知覚過敏症は、軽度なものでは期間が経過すると自然に消失することもよくあります」とし、その理由を、露出した象牙質の表面で唾液や歯みがき剤からの再石灰化成分によって微細な空隙が封鎖されるためと説明しています。

知覚過敏用の歯みがき剤は効きますか。

成分によって考え方が違います。テーマパーク8020は、歯の神経の周囲をカリウムイオンが多く取り巻くと神経の細胞が興奮しにくくなる性質を利用して、硝酸カリウムを含む歯みがき剤を継続して使うことで知覚過敏の改善効果があることが確かめられていると説明しています。露出部の空隙を封鎖する方法については、歯科医院で塗布する方法のほうが歯みがき剤による方法よりも効果が高く即効性もあるとしています。

知覚過敏は予防できますか。

テーマパーク8020は「知覚過敏の確実な予防法はありません」とし、健康な歯肉でも加齢によってある程度歯肉が退縮することは避けられないとしています。そのうえで、歯の根部の象牙質の露出を防ぐには歯周病の予防に努めることと、歯肉の退縮が進みやすいような不適切な歯みがき法をしないことを挙げ、歯周病とむし歯の予防が知覚過敏の予防につながると説明しています。

【出典】日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」知覚過敏(監修:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学 教授 田上順次)/日本歯科医師会「お口のなんでも相談 vol.15 知覚過敏」。いずれも2026年8月13日に確認しました。本記事は一般的な情報提供であり、個別の症状の診断・治療方針は歯科医院にご相談ください。

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