替えブラシの箱に「約3か月」と書いてあったから3か月使う。そう決めている人は多いはずです。ただ、交換の目安として公表されているのは、日数よりも先に「毛先の状態」です。全日本ブラシ工業協同組合は1か月に一度を目安としつつ、使用期間にかかわらずヘッドから毛先がハミ出していたら交換するようすすめています。この記事では、替え時の見分け方と、替えずに使い続けると何が起きるのかを、公的な資料と業界団体の資料から整理します。
- 目安は1か月に一度。全日本ブラシ工業協同組合は「まだ使えると思っても、1か月に一度を目安に交換しましょう」としている
- ただし日数より毛先が先。「使用期間にかかわらず、ヘッドから毛先が少しでもハミ出していたら交換」
- 見分け方は、毛の側からではなくヘッドの背中側から見る。正面からだと開きに気づけない
- 毛先が開いていなくても毛のコシは落ちる。歯垢は毛先が機械的にかき出すものなので、コシが落ちれば落ちなくなる
- 本体の寿命(年単位)と替えブラシの交換(月単位)は別の話。混同すると原因の切り分けを誤る
結論:1か月が目安。ただし判断するのは毛先
替えブラシの交換について、業界団体が公表している目安ははっきりしています。
毎日使った歯ブラシは、まだ使えると思っても、1か月に一度を目安に交換しましょう。(全日本ブラシ工業協同組合)
注目したいのは「まだ使えると思っても」という一文です。使う側の感覚は、実際の消耗より遅れて働きます。だから同じページで、日数とは別にもう1つの基準が示されています。
毛先が開いた歯ブラシは汚れを落とす力が低下します。図のようにして歯ブラシの毛の反対側から見てチェックすると、毛先の開き具合がよくわかります。使用期間にかかわらず、ヘッドから毛先が少しでもハミ出していたら交換するようにしましょう。(同上)
箱に書かれている「約3か月」と、業界団体の「1か月」は、どちらが正しいという話ではありません。メーカーが示すのは製品としての交換目安、業界団体が示すのは清掃効果を保つための推奨で、立っている前提が違います。当サイトの電動歯ブラシの寿命の記事でもメーカー推奨として約3か月を挙げていますが、どちらの数字を採るにしても、期間が来る前に毛先がハミ出していたらそこが替え時という点は共通です。
「使用期間にかかわらず」という書き方が答えです。1か月というのは、多くの人にとってだいたいそのくらいで替え時が来る、という目安であって、期限ではありません。1日3回磨く人、力を入れて磨くくせがある人は、それより早く来ます。
替え時の見分け方は「裏返して見る」
ほとんどの人は、歯ブラシを毛の側から見ています。この角度だと、毛が外へ広がっていても、手前の毛に隠れて分かりません。
正しい見方は、ヘッドの背中側、つまり毛の反対側から見ることです。ヘッドの輪郭という基準線が見えるので、そこから毛先がはみ出していれば一目で分かります。全日本ブラシ工業協同組合が紹介しているのはこの方法です。
外したほうが見やすいですが、本体に付けたままでも構いません。大事なのは見る角度です。
ヘッドのプラスチックの輪郭が見える向きにします。この輪郭が判定の基準線になります。
少しでもハミ出していたら交換です。「まだ全体は開いていないから」と粘る必要はありません。
この方法の利点は、記憶に頼らないことです。いつ替えたか思い出せなくても、その場で判断できます。
毛先が開いていなくても、コシは落ちている
見た目がきれいでも交換したほうがよい場合があります。同組合はこう書いています。
歯ブラシは使用し続けると、毛先が開いてきます。また、一見、毛先が広がらずにきれいな状態でも、毛自体のコシがなくなってきます。毛のコシは歯垢をかき出すのにとても重要です。(同上)
なぜコシが重要なのかは、歯垢がどういうものかを知ると腑に落ちます。厚生労働省のe-ヘルスネットは、プラーク(歯垢)についてこう説明しています。
口の中のプラークを取り除くためには、歯ブラシを使って機械的に除去することが基本です。(厚生労働省 e-ヘルスネット「プラーク/歯垢」)
同ページは、プラークが粘着力があり水に溶けないため、うがいだけでは取り除くことができないこと、食後数時間で形成されること、プラーク1mgの中には10億個以上の細菌が存在することも記しています。
つまり歯垢を落とす作業は、薬剤で溶かすのではなく毛先で物理的にかき出す作業です。かき出す道具のコシが抜ければ、当てている時間が同じでも落ちる量は減ります。磨いた実感だけは変わらないので、本人は気づきません。
電動歯ブラシは、当てる時間が長いぶん消耗も早い
e-ヘルスネットは、電動歯ブラシをこう定義しています。
電動歯ブラシは、電気で自動的に動く歯ブラシを指します。振動あるいは回転によって歯面に付着したデンタルプラークや着色を除去する道具です。(厚生労働省 e-ヘルスネット「歯みがきを助けるもの」)
手用歯ブラシは自分で動かすので、毛先が歯に当たる回数は腕の動きの回数です。電動歯ブラシは当てているあいだ、機械が毛先を動かし続けます。同じ3分でも、毛が受ける往復の回数は比べものになりません。だから「手用と同じ感覚で3か月」という見積もりは、そもそも前提が違います。
同ページは使い方についても具体的です。音波歯ブラシはブラシをよく湿らせて毛先が歯と歯肉の境目に当たるようにし、電源を入れて、歯に当てるだけで一歯ずつずらしていく。そして注意として「あまり長い間使用すると歯面や歯肉を傷つけてしまう可能性があるので、3分以内の使用にとどめることが推奨されています」と書かれています。当て方の詳細は電動歯ブラシの正しい使い方にまとめています。
あわせて同ページは、電動歯ブラシは歯面の研磨効果は優れているが、歯間部や隣接面の清掃効果は低いため、歯間ブラシやデンタルフロスの併用が必要だとしています。替えブラシを新品にしても歯と歯の間は届きません。デンタルフロスの使い方と歯間ブラシの使い方と選び方もあわせて確認してください。
本体の寿命と替えブラシの交換は別の話
「電動歯ブラシの替え時」という言葉は、2つのまったく違うものを指します。ここを混ぜると、原因の切り分けを間違えます。
| 替えブラシ | 本体 | |
|---|---|---|
| 替え時を決めるもの | 毛の開きとコシ | モーターと充電池の劣化 |
| 時間の単位 | 月 | 年 |
| 判断の方法 | ヘッドの背中側から見る | 振動の弱まり、充電の持ち |
| 放置したときに起きること | 歯垢が落ちにくくなる | 途中で止まる、充電が持たない |
替えブラシが新品なのに磨けた感じがしないときは、本体側を疑ってください。逆に本体を新しくしても、付けている替えブラシが古いままなら磨けるようにはなりません。本体側の見極めは意外と知らない電動歯ブラシの寿命、症状別の切り分けは電動歯ブラシが動かない・すぐ止まると電動歯ブラシの充電が持たない・電池が切れるで扱っています。
替えブラシは1人1本。家族で回さない
替えブラシの本数を節約しようとして、本体を家族で共有したまま同じヘッドを使い回すのは避けてください。口の中の細菌は人によって構成が違い、ヘッドを共有するとそれを直接やりとりすることになります。本体は共有できても、替えブラシは1人1本が原則です。詳しくは電動歯ブラシは家族で共有できる?にまとめています。
保管の仕方も、替えブラシの持ちと衛生に直結します。全日本ブラシ工業協同組合はこう書いています。
歯ブラシを使い終わった後は、水洗いしてから水気を切り、風通しのよい場所にヘッドの部分を上にして立てて保管し、乾燥させてください。(同上)
同組合は交換をすすめる理由の1つとして、毎日水回りで使うので雑菌が繁殖しやすく、衛生面でも1か月に1回の交換がおすすめだとしています。濡れたままキャップをかぶせる、コップの中で毛先を下にする、家族のブラシと毛先を触れさせる——このあたりは交換の頻度ではなく置き方の問題です。歯ブラシの正しい保管方法もあわせてご覧ください。
忘れないための仕組みをつくる
交換を先延ばしにする理由は、たいてい「まだ使える気がする」という毎回の判断です。判断そのものをなくしてしまえば先延ばしは起きません。方法は2つあります。
全日本ブラシ工業協同組合は、毎月8日を歯の日にちなんだ歯ブラシ交換の日として習慣づけることをすすめています。カレンダーに繰り返しの予定を入れておけば、判断を挟まずに替えられます。
替えブラシが定期的に手元に届けば、そもそも買い忘れが起きません。在庫があれば「もったいない」も働きにくくなります。仕組みの比較はサブスクと買い切りはどちらが得?で扱っています。
どちらの方法でも、月に一度は前述の「裏返して見る」を挟んでください。日付が来ていなくても、ハミ出していれば交換です。
替えブラシを選ぶときの見方
交換のたびに同じものを買うか、変えてみるかで迷う場合、全日本ブラシ工業協同組合が示している選び方の軸が参考になります。同組合は「まず一番は、目的に合った『形状』を選ぶこと」としたうえで、次のように整理しています。
| 気になっていること | 向いている毛の形状 | 理由(同組合の説明) |
|---|---|---|
| 虫歯や歯の着色の予防 | フラット毛(先端が平ら) | しっかりと歯の表面に当たる。毛先の表面がラウンドカットで丸く加工されており、歯茎を傷つけにくく歯垢を効率よく落とすのに適している |
| 歯周ポケット、歯茎の腫れや出血 | 超極細毛(超先細毛) | 毛先が細くしなやかで、歯茎への刺激を抑えながら歯周ポケットに入り込みやすく、奥にある歯垢を除去する |
| 両方が気になる | ダブル植毛タイプ | 長い超極細毛と短いフラット毛を組み合わせ、歯の表面と歯茎の両方にアプローチできる |
歯茎からの出血が続いている場合は、ブラシの形状を変える前に原因を確認してください。電動歯ブラシで血が出るのはなぜ?で、続けてよい場合と受診したほうがよい場合を分けて説明しています。
よくある質問
電動歯ブラシの替えブラシは何か月で交換すればいいですか?
全日本ブラシ工業協同組合は「毎日使った歯ブラシは、まだ使えると思っても、1か月に一度を目安に交換しましょう」としています。ただし同組合は同時に「使用期間にかかわらず、ヘッドから毛先が少しでもハミ出していたら交換するように」とも書いており、日数はあくまで目安です。1日3回磨く人や力が強い人は1か月より早く替え時が来ますし、毛先が開いていなくても毛のコシは落ちていきます。カレンダーと毛先の両方で判断してください。
替えブラシの交換時期はどうやって見分けますか?
毛の側からではなく、歯ブラシの毛の反対側、つまりヘッドの背中側から見てください。全日本ブラシ工業協同組合はこの見方を紹介したうえで、ヘッドの輪郭から毛先が少しでもハミ出していたら交換するようすすめています。正面から見ると開きに気づきにくく、まだ使えると判断しがちです。なお同組合は、一見きれいでも毛自体のコシがなくなること、そして毛のコシは歯垢をかき出すのにとても重要であることも指摘しています。
替えブラシを交換しないと何が起きますか?
落とせるはずの歯垢が落ちなくなります。厚生労働省e-ヘルスネットは、プラーク(歯垢)は粘着力があり水に溶けないためうがいだけでは取り除くことができず、歯ブラシを使って機械的に除去することが基本だと説明しています。つまり歯垢の除去は毛先が物理的にかき出す作業で、毛のコシが落ちればその力も落ちます。加えて全日本ブラシ工業協同組合は、毎日水回りで使うため雑菌が繁殖しやすく、衛生面でも1か月に1回の交換をすすめています。
電動歯ブラシの本体の寿命と、替えブラシの交換時期は同じですか?
別のものです。替えブラシは毛の消耗で決まるため月単位、本体はモーターと充電池の劣化で決まるため年単位で考えます。替えブラシを替えずに本体だけ買い替えても磨けるようにはなりませんし、逆に替えブラシが新しいのに磨けた感じがしないときは本体側の振動が落ちている可能性があります。切り分け方は本体の寿命の記事にまとめています。
交換の日を忘れないコツはありますか?
全日本ブラシ工業協同組合は、毎月8日を歯の日にちなんだ歯ブラシ交換の日として習慣づけることをすすめています。日付を固定すると「まだ使える気がする」という毎回の判断を挟まずに済みます。替えブラシが定期的に届く仕組みを使うのも同じ発想で、判断そのものを減らす方法です。
使った替えブラシはどう保管すればいいですか?
全日本ブラシ工業協同組合は「使い終わった後は、水洗いしてから水気を切り、風通しのよい場所にヘッドの部分を上にして立てて保管し、乾燥させてください」としています。濡れたままキャップをかぶせる、コップの中で毛先を下にする、家族の歯ブラシと毛先を触れさせるといった置き方は避けてください。
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