歯ぐきから血が出る、口臭が気になる。そう思って歯科に行くと、まず器具を歯と歯ぐきの間に差し込まれて、数字を読み上げられます。あの数字が何なのか、何のために測っているのかを説明されないまま終わることもあります。
厚生労働省 e-ヘルスネットの「歯周病の検査」は、歯周病の精密な検査を3つの柱で説明しています。歯周ポケットの深さを測るプロービング検査、骨の状態を見るエックス線検査、磨き残しを数えるプラーク付着率の検査です。この記事では、3つがそれぞれ何を測っているのか、自治体から届く節目の検診とは何が違うのかを、原文の記述にそって整理します。
この記事の要点
- 精密な検査はプロービング検査・エックス線検査・プラーク付着率の検査の3つが柱
- 歯周ポケットは健康な歯肉で1〜2mm程度、歯周病に罹った歯肉で3mmを超える深さ。測るときの圧は25g程度
- エックス線で分かるのはすでに失われた骨の量。被曝量は自然放射線1年分の数十から数百分の1程度
- 自治体の節目検診は指定された6本だけを簡易的なプローブで測り、判定は異常なし・要指導・要精密検査の3つ
- 「8割が歯周病」は改定前のCPIで歯肉出血・歯石・歯周ポケットのいずれかがあった人の割合に由来する
自覚症状が出ないから、検査でしか分からない
e-ヘルスネット「歯周病の検査」の冒頭です。
「歯周病は、とくに初期の段階では自覚症状がほとんど出ないので、歯科医療機関での検査を受けないと正確な診断を行うことはできません。」
同じ e-ヘルスネットの「歯周疾患の有病状況」には、少し角度の違う記述があります。歯科疾患実態調査で「歯ぐきが痛い、はれている、出血がある」を有する人の割合は、65歳未満の成人で概ね15%前後、65歳以上の高齢者で10%強。そのうえで「歯周病はよく『無自覚のまま進行する』といわれますが、歯周病に関連する自覚症状を感じている人は、決して少なくないことがわかります」としています。
2つを合わせると、症状があることは手がかりになるが、症状がないことは健康の証明にならないという読み方になります。セルフチェックでどこまで分かるかは歯周病のセルフチェック7項目。当てはまったら次に何をするかにまとめています。
プロービング検査:25グラムで測る
1つめは、歯と歯ぐきの隙間の深さを測る検査です。
「測定には目盛りのついたプローブ(探針:針状の金属製の器材)を歯と歯肉の隙間にそっと差し込みます。25g程度と非常に軽い圧しか加えませんので、痛みはほとんどありません。」
25gは、1円玉1枚が1gなので硬貨25枚ぶんです。歯ブラシを歯に当てる力はこれよりはるかに大きいので、測るときに痛みが出るとすれば、それは圧の強さではなく歯ぐきの炎症の側の話になります。
深さの目安は次のとおりです。
| 状態 | 歯周ポケットの深さ(原文) |
|---|---|
| 歯周病のない健康な歯肉 | 1〜2mm程度 |
| 歯周病に罹った歯肉 | 3mmを超えるような深さ |
| 重症の患者 | 10mmを超えるほどプローブが入っていくこともある |
原文は「歯周ポケットは一般には深くなるほど歯周病の程度が進んでいると考えられ」としており、深さが重症度の判定に使われます。注意しておきたいのは、同ページに載っている症例写真の説明です。「一見すると健康に見える歯肉にもかかわらず6mmもプローブが入る状態」とあります。見た目と深さは一致しないことがある、という例として示されています。
エックス線検査:すでに失われた骨の量が出る
2つめは、歯ぐきに隠れている骨を見る検査です。
「さらに歯周病が進んでくると、歯を支えている歯槽骨が溶けてきますので、歯肉の下に隠れている歯槽骨の高さを調べることも必要になります。歯槽骨の状態を調べるのに最も効果的な検査がエックス線検査です。」
被曝量についても1文が置かれています。「歯のエックス線撮影の際の被爆量については、日常生活で自然界から浴びる1年分の自然放射線の数十から数百分の1程度とされています」(原文の表記は「被爆量」です)。
この検査の性質について、原文には読み落としやすい1文があります。
「エックス線検査で評価される歯槽骨の喪失量は、歯周病によってすでに失われてしまった歯を支える骨の量を示すことになります。」
つまりエックス線に映るのはこれまでの結果です。今日からのケアがどう効くかは、ここには写りません。歯を失う原因そのものは歯を失う原因はむし歯と歯周病。効く手が違う理由で扱っています。
プラーク付着率の検査:染め出して数える
3つめが、磨き残しを数える検査です。原文は手順まで書いています。
「プラークの付着量は、染色液を使って染め出してから軽くうがいをしてもらい、付着している部位がわかるようにします(写真の、歯が赤く染まっている部分に付着しています)。そして、肉眼で確認してプラーク付着率を記録します。」
記録する理由も示されています。「プラークの付着率は、治療に対する歯肉の炎症の改善しやすさや治療が終了した後の歯周病の再発などの指標として用いることができます」。
3つの検査のうち、自分の磨き方がそのまま数字になるのはこれだけです。歯周ポケットの深さとエックス線の骨の量は、これまでの結果を測るもので、その日の磨き方では動きません。電動歯ブラシに替えて当て方を変えたことが数字に出るとすれば、出るのはプラーク付着率の側です。磨き残しが出やすい場所と当て方は電動歯ブラシの正しい使い方。当て方・動かし方・時間を歯科目線で解説、プラークと歯石の違いは歯垢と歯石の違いとは?歯石になる前に落とすセルフケアのコツをご覧ください。
そのほかに挙げられている3つの検査
原文は、3つの柱に続けてこう書いています。
「その他の歯周病の検査としては、歯肉からの出血の程度を調べる検査(出血指数)、歯の揺れを調べる検査(動揺度検査)、歯周病原菌についての細菌検査などがあります。」
| 検査 | 調べるもの(原文) |
|---|---|
| 出血指数 | 歯肉からの出血の程度 |
| 動揺度検査 | 歯の揺れ |
| 細菌検査 | 歯周病原菌について |
出血については、e-ヘルスネット「歯周疾患の有病状況」に全国の数字があります。歯肉出血がある人の割合は「どの年齢階級も4割前後と概ね一定した値」。年齢で大きく変わらない指標です。一方で歯周ポケット(4mm以上)の保有者の割合は45歳以上で過半数とされています。磨いたときに血が出る場合の考え方は電動歯ブラシで血が出るのはなぜ?やめるべきか、続けるべきかの判断で扱っています。
自治体の節目検診は6本だけ測る
歯科医院で受ける精密な検査と、自治体から案内が来る検診は中身が違います。
e-ヘルスネットは、各自治体などを中心に「おもに40、50、60、70歳の節目の方を対象とした検診」が実施されていると説明し、内容は厚生労働省「歯周病検診マニュアル2015」に基づくとしています。
歯周病に関連する自覚症状の有無、歯科への定期的な受診の有無、歯磨きの回数・時間、歯周炎に関連する可能性のある全身疾患の有無、歯周病が起こりやすく重症化しやすい喫煙習慣の有無。
健康な歯、むし歯、詰め物や金属の冠をかぶせた歯の数や抜かれてしまった歯の数。全部の歯ではなく指定されている6本の歯を調べるプロービング検査(WHOプローブという目盛りのやや大まかなプローブを使った簡易的な歯周ポケットの検査)。プラークの付着状況。
結果によって「異常なし」「要指導」「要精密検査」と判定されます。
「要精密検査の場合には、歯科医療機関において、先に示したような全部の歯のプロービング検査やエックス線検査などを行い、歯周組織の状態を詳しく調べることが必要となります。」
検診で「異常なし」だった場合に押さえておきたいのは、測ったのは指定された6本で、プローブも「目盛りのやや大まかな」簡易的なものだということです。原文はその違いを明記しており、精密な検査に当たるのは歯科医療機関で全部の歯を測るほうです。
「8割が歯周病」はどこから来た数字か
この数字の由来は、e-ヘルスネット「歯周疾患の有病状況」が説明しています。
「これは以前の歯科疾患実態調査(2005・2011年)に用いられていたCPIの改定前の方式で何らかの所見が認められた人が約8割だったことに由来しています。ここで言う所見とは、歯肉出血・歯石・歯周ポケットのいずれかが認められた場合を指しますので、少しでも歯石がついている場合も『所見あり』と評価されます。」
そして結論がこう書かれています。「したがって『8割が歯周病』というのは、ウソではないものの、大げさな捉え方といえます。」
同ページは、増減の傾向についても留保を付けています。歯周ポケット(4mm以上)保有者の割合は2016年の調査で増加傾向が顕著だったものの、「2016年の調査で用いた調査方法は、診査方法が以前と同様であるものの、記録方法が異なることから、これが結果に影響した可能性も指摘されています」として、「歯周病の増減傾向には不確かな面があると言わざるを得ない状況にあります」と書いています。そのうえで、歯の喪失防止が進んで歯の数が増えた結果「今までよりも歯周病に罹る歯の数も増えている」という量の面から、増加傾向にあるのは間違いないと考えられるとしています。
国際比較については、35〜44歳のCPIで「この図における歯周ポケットを有する割合は4〜6割程度であり、日本の状況は、世界の一般的な状況に比べると、比較的良好といえます」とされています。
検査のあとに何が起きるか
e-ヘルスネット「歯周治療の流れ」は、検査を起点に流れを示しています。
| 順 | 内容(原文の要点) |
|---|---|
| 1 | 精密な検査を行い、歯ぐきや歯槽骨の状態、悪化させる要因の有無を分析して治療計画をたてる |
| 2 | 歯みがきの練習。炎症が減って歯ぐきが引き締まると「歯ぐきの中の歯石が見えやすくなり、歯石除去が効果的に行えるようになります」 |
| 3 | 歯石除去。「歯石を取ると歯石の表面や内部の細菌が減り、さらに歯ぐきが引き締まってきます」 |
| 4 | 修復物や咬み合わせのチェック。適合の悪い修復物は除去、異常な咬み合わせは調整 |
| 5 | この時点で再度精密な検査。状態がよければメインテナンスへ |
| 6 | 深い歯周ポケットが残っていれば歯周外科。行ったあとも「やはり精密な検査を行い、治療効果を確認します」 |
検査が最初と途中と最後に3回出てくるのが、この流れの特徴です。原文は歯みがきの練習を最初に置く理由を「まずは原因除去が重要ですから」と書いています。そして締めはこうです。
「また、いくら良い治療を受けても自分でしっかり歯みがきをしないと歯ぐきの状態は良くならないことを認識し、治療が終わったあとも定期的にメインテナンスを受けることが重要です。」
なお歯周外科のうち歯周組織再生療法については「健康保険の対象外になりますが、症例によってはある程度、歯槽骨や歯ぐきを増やすことができます」と書かれています。どの治療に当たるかは症例によるため、担当の歯科医師にご確認ください。道具の選び方は電動歯ブラシの選び方。予防歯科の視点で見る6つのチェックポイントにまとめています。
よくある質問
歯周病かどうかは、自分では分からないのですか。
厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病の検査」は「歯周病は、とくに初期の段階では自覚症状がほとんど出ないので、歯科医療機関での検査を受けないと正確な診断を行うことはできません」としています。同「歯周疾患の有病状況」は一方で「歯周病に関連する自覚症状を感じている人は、決して少なくない」とも書いており、症状が無いことが健康の証明にはならない、という読み方になります。
歯周ポケットは何ミリから問題になりますか。
e-ヘルスネット「歯周病の検査」は「歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)は、歯周病のない健康な歯肉では1~2mm程度ですが、歯周病に罹った歯肉では3mmを超えるような深さになり、重症の患者さんでは10mmを超えるほどプローブが入っていくこともあります」としています。同ページには「一見すると健康に見える歯肉にもかかわらず6mmもプローブが入る状態」の症例写真も示されています。本記事は原文に書かれている範囲を示すもので、個別の診断を行うものではありません。
歯周ポケットを測る検査は痛いですか。
e-ヘルスネット「歯周病の検査」は、測定に「目盛りのついたプローブ(探針:針状の金属製の器材)を歯と歯肉の隙間にそっと差し込みます」とし、「25g程度と非常に軽い圧しか加えませんので、痛みはほとんどありません」としています。
歯のエックス線検査の放射線は心配ありませんか。
e-ヘルスネット「歯周病の検査」は「歯のエックス線撮影の際の被爆量については、日常生活で自然界から浴びる1年分の自然放射線の数十から数百分の1程度とされています」としています。同ページはエックス線検査を「歯槽骨の状態を調べるのに最も効果的な検査」と位置づけています。
エックス線で骨が溶けていると言われました。元に戻りますか。
e-ヘルスネットの記述は「エックス線検査で評価される歯槽骨の喪失量は、歯周病によってすでに失われてしまった歯を支える骨の量を示すことになります」です。つまりこの検査で見えるのは、これから起きることではなく既に失われた量です。なお「歯周治療の流れ」には、歯周外科のうち「健康保険の対象外になりますが、症例によっては歯周組織再生療法によってある程度、歯槽骨や歯ぐきを増やすことができます」という記述があります。回復の見込みは症例によるため、担当の歯科医師にご確認ください。
染め出しの検査は何のためにするのですか。
磨き残しの位置と量を記録するためです。e-ヘルスネット「歯周病の検査」は、染色液で染め出して軽くうがいをしてから「肉眼で確認してプラーク付着率を記録します」とし、「プラークの付着率は、治療に対する歯肉の炎症の改善しやすさや治療が終了した後の歯周病の再発などの指標として用いることができます」としています。
自治体から届く歯周病検診は、歯科医院の検査と同じ内容ですか。
同じではありません。e-ヘルスネット「歯周病の検査」によれば、自治体の検診は厚生労働省「歯周病検診マニュアル2015」に基づき、「全部の歯ではなく指定されている6本の歯を調べるプロービング検査(WHOプローブという目盛りのやや大まかなプローブを使った簡易的な歯周ポケットの検査)」が含まれます。判定は「異常なし」「要指導」「要精密検査」で、要精密検査の場合は歯科医療機関で全部の歯のプロービング検査やエックス線検査などを行うことが必要とされています。
「国民の8割が歯周病」という数字は本当ですか。
e-ヘルスネット「歯周疾患の有病状況」が由来を説明しています。これは以前の歯科疾患実態調査(2005・2011年)に用いられていた地域歯周疾患指数(CPI)の改定前の方式で「何らかの所見」が認められた人が約8割だったことに由来し、所見とは歯肉出血・歯石・歯周ポケットのいずれかが認められた場合を指します。「少しでも歯石がついている場合も『所見あり』と評価されます」とされ、同ページは「『8割が歯周病』というのは、ウソではないものの、大げさな捉え方といえます」と結論づけています。
出典
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病の検査」(内藤徹/福岡歯科大学 高齢者歯科学分野 教授・最終更新 2022年12月21日)— プロービング検査の圧と深さの目安、エックス線検査と被曝量、プラーク付着率の検査、その他の3検査、自治体の節目検診の内容と判定区分
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周疾患の有病状況」(安藤雄一/国立保健医療科学院 生涯健康研究部 主任研究官・最終更新 2020年7月28日)— 歯周ポケット保有者と歯肉出血の割合、自覚症状の割合、「8割が歯周病」の由来、調査方法の留保、国際比較
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周治療の流れ」(米田雅裕/福岡歯科大学 総合歯科学講座 総合歯科学分野 教授・最終更新 2020年1月6日)— 治療の順序と検査が入る3つの時点、歯周組織再生療法の保険の扱い
- 厚生労働省「歯周病検診マニュアル 2015」— 上記「歯周病の検査」が自治体の検診内容の根拠として挙げている資料
本記事は、公的機関が公開している資料に書かれている内容を整理したものです。歯周病の診断・治療方針は個々の口の状態によって異なります。症状がある場合や検査結果の意味について、歯科医院でご確認ください。
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