出張や旅行の荷造りで、いつもの電動歯ブラシを持っていくか迷う人は少なくありません。リチウムイオン電池が入っている、モーターで動く、しかも歯みがき粉やマウスウォッシュも一緒に持っていく——空港で止められる要素が3つも重なる持ち物です。この記事では、国土交通省が公表している危険物の取扱い資料と国際線の液体物制限の資料をもとに、本体・電池・歯みがき粉のそれぞれについて、持ち込めるのか、預けられるのか、どんな条件が付くのかを整理します。
- 電動歯ブラシ本体は機内持込み・お預けのどちらもできる。国の資料では「リチウム電池を内蔵した携帯型電子機器」として扱われます
- 預けるときの条件は電源を切ることと、偶発的な作動や損傷を防ぐ措置(強固なスーツケースへの梱包、衣類などによる保護)
- 乾電池・ニッケル水素電池は「非危険物」。容量の条件は付いていません
- 予備の電池は預けられない(機内持込みのみ)。モバイルバッテリーは機内で充電しないこと
- 国際線では歯みがき粉が液体物。100ml以下の容器+1リットル以下の透明袋1つが客室内のルールです
まず結論。本体は持ち込みも預け入れもできる
電動歯ブラシの本体は、機内に持ち込むこともスーツケースに入れて預けることもできます。国土交通省が公表している資料「危険物であっても航空機内への持込み又はお預かりができるもの」では、「リチウム電池を内蔵した携帯型電子機器」が持込み・お預けの両方で可とされています。この資料は「航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示」に基づくもので、令和8年4月24日適用の内容が示されています。
ただし条件があります。同資料は、リチウム電池を内蔵した携帯型電子機器について次のように定めています。リチウムイオン電池はワット時定格量が160Wh以下のものであること(リチウム金属電池はリチウム含有量2g以下)、単電池および組電池は国連試験基準マニュアルのそれぞれの試験要件を満たしていることが示された型式のものであること、電子機器は不測の作動を防止するように措置するとともに、損傷しないように保護すること、そして預入手荷物として輸送する場合は電源を切ることです。
160Whという数字は、ノートパソコンの大きなバッテリーでも届かない容量です。歯ブラシサイズの機器がこの上限に触れることはまずありません。実務上ひっかかるのは容量ではなく、「電源が入らないようにしてあるか」のほうです。
「電動歯ブラシ」という品目名は、国のリストには出てこない
調べても答えが出てこない理由がここにあります。国土交通省の「機内持込・お預け手荷物における危険物について」に掲載されている代表例の一覧には、「電動歯ブラシ」という品目名がありません。掲載されているのは「携帯型電子機器(本体)」という区分です。電動歯ブラシは、この区分に含まれるものとして読むことになります。
同じ一覧では、刃物の欄に「剃刀」があり、備考に「電動剃刀(電動シェーバー)は持込可能」と書かれています。身だしなみ用の小型家電が、刃物ではなく電子機器として扱われることを示す記載です。電動歯ブラシも同じ考え方の延長にあります。
代表例の一覧では、携帯型電子機器(本体)のリチウムイオン電池についてワット時定格量160Wh以下は持込み○・お預け○、備考として「偶発的な作動や損傷を防止するための措置(強固なスーツケースへの梱包、衣類などによる保護など)をとること」「お預けの場合は、電源を完全に切ること(ワット時定格量2.7Whを超えるものに限る)」が挙げられています。
電池の種類で変わるところ
電動歯ブラシには充電式と乾電池式があります。国の資料では、この2つは別の行に書かれています。
| 種類 | 機内持込み | お預け | 資料上の扱い |
|---|---|---|---|
| 乾電池 | ○ | ○ | 備考は「非危険物」 |
| ニッケル水素電池 | ○ | ○ | 備考は「非危険物」 |
| ニカド電池(ニッカド電池) | ○ | ○ | 備考は「非危険物」 |
| リチウムイオン電池を内蔵した携帯型電子機器(本体) | ○ | ○ | 160Wh以下。お預けは電源を完全に切る(2.7Whを超えるものに限る) |
| 上記機器の予備電池(取り外したものを含む) | ○ | × | 100Wh以下。ショート防止の措置をとること |
表で読み違えやすいのは最後の行です。本体に入っている電池は預けられるのに、取り外した予備の電池は預けられません。充電スタンドごと持っていく人には関係のない話ですが、乾電池式で替えの電池を用意していく場合は、電池だけ手荷物側に移す必要があります。モバイルバッテリー(パワーバンク)についても、資料は「ショートしないように個々に保護されていること」「航空機内において充電しないこと」を条件に挙げています。
自分の機種がどちらなのか分からない場合は、充電式と電池式の違いで見分け方を整理しています。
見落とされやすいのは歯みがき粉のほう
本体より先に止められることがあるのが、一緒に入れた歯みがき粉です。国土交通省の「量的制限の対象となる液体物のリスト」には、「ハミガキ(いわゆる歯磨き粉)」が液体物として掲載されています。同じリストには「口腔洗浄液、口中清涼剤」としてマウスウォッシュや口臭スプレーも載っています。
国際線の客室内へ持ち込む場合のルールは、国土交通省の概要資料に次のようにまとめられています。すべての液体物は100ml以下の容器に入れる(100mlを超える容器に100ml以下の液体物が入っていても不可)、それらの容器をジッパー付きの容量1リットル以下の透明プラスチック製の袋に余裕をもって入れる、袋の数は旅客1人あたり1つ。医薬品やベビーミルク・ベビーフード、特別な制限食は適用除外とされています。
大事なのは、この制限が客室内に持ち込む手荷物だけの話だという点です。同資料は「受託手荷物には適用されません」と明記しています。いつものチューブをそのまま持っていきたいなら、預ける荷物に入れるのがいちばん簡単な解決策です。
なお液体物には、液体だけでなくジェル類やエアゾール、「容器に入れないとその形状を保てない」半液体状物も含まれるとされています。ジェル状の歯みがきやフォームタイプのものも同じ扱いになります。
出発前のチェックは4つ
- 本体の電池の種類を確認する。充電式ならリチウムイオン電池、乾電池式なら非危険物。どちらでも持込み・お預けはできます
- 預けるなら電源を切り、動き出さないようにする。ロック機能があれば使い、無ければケースに入れるか衣類で包みます
- 予備の電池は手荷物へ移す。取り外した電池・モバイルバッテリーは預けられません
- 歯みがき粉とマウスウォッシュの容量を見る。国際線で客室内に持ち込むなら100ml以下の容器に移し、1リットル以下の透明袋にまとめます
旅行中は洗面所の環境も変わります。濡れたまま密閉して持ち歩くと、帰宅する頃にはブラシの根元に黒ずみが出ていることがあります。持ち運びと乾かし方は歯ブラシの正しい保管方法にまとめています。
まとめ
電動歯ブラシ本体は、国の資料では「リチウム電池を内蔵した携帯型電子機器」として持込み・お預けのどちらも可。条件はワット時定格量160Wh以下と、預けるときに電源を切ること、そして偶発的な作動や損傷を防ぐ措置です。乾電池・ニッケル水素電池は非危険物。取り外した予備電池だけは預けられません。意外な落とし穴は歯みがき粉で、国際線では液体物として100ml以下+1リットル以下の透明袋1つのルールがかかります。最終的な判断は保安検査場の検査員が行うため、迷うものは航空会社に確認してください。
よくある質問
電動歯ブラシは飛行機の機内に持ち込めますか。
リチウム電池を内蔵した携帯型電子機器として、機内持込み・お預けのどちらもできます。国土交通省が公表している「危険物であっても航空機内への持込み又はお預かりができるもの」では、リチウム電池を内蔵した携帯型電子機器は持込み・お預けとも可とされ、条件としてリチウムイオン電池のワット時定格量が160Wh以下であること、電子機器は不測の作動を防止するように措置し損傷しないように保護すること、預入手荷物として輸送する場合は電源を切ることなどが挙げられています。市販の電動歯ブラシの電池はこの上限をはるかに下回る容量です。
スーツケースに入れて預けるとき、気をつけることはありますか。
電源が入らないようにすることです。国土交通省の資料は、携帯型電子機器を預入手荷物として輸送する場合について「電源を切ること」とし、リチウム含有量の合計が0.3gを超えるリチウム金属電池、またはワット時定格量の合計が2.7Whを超えるリチウムイオン電池を内蔵するものに限る、としています。機内持込・お預け手荷物の代表例をまとめた資料でも、偶発的な作動や損傷を防止するための措置として、強固なスーツケースへの梱包や衣類などによる保護が挙げられています。荷物の中で振動が始まらないよう、ロック機能を使うかケースに入れて預けるのが安全です。
乾電池式の電動歯ブラシはどう扱われますか。
乾電池は非危険物として扱われます。国土交通省の代表例の資料では、乾電池・ニッケル水素電池・ニカド電池はいずれも持込み・お預けとも可で、備考は「非危険物」と記載されています。リチウム電池のような容量の条件は付いていません。ただし本体のスイッチが押されて動き出さないようにしておく点は、充電式と同じです。
替えの電池やモバイルバッテリーは預けてもいいですか。
予備の電池は預けられません。国土交通省の資料では、携帯型電子機器の予備電池(電子機器から取り外したものを含む)は機内持込みのみ可で、お預けは不可とされています。個数の扱いにも決まりがあり、ワット時定格量が100Whを超えて160Wh以下のものは個数が制限されます。モバイルバッテリー(パワーバンク)についても、ショートしないように個々に保護すること、航空機内において充電しないことが条件として挙げられています。
歯みがき粉は機内に持ち込めますか。
国際線では液体物の制限がかかります。国土交通省の「量的制限の対象となる液体物のリスト」には「ハミガキ(いわゆる歯磨き粉)」が掲載されており、客室内への持ち込みは100ml以下の個々の容器に入れ、それらを1リットル以下のジッパー付き透明プラスチック袋に入れる必要があります。袋は1人あたり1つです。この制限は客室内に持ち込む手荷物が対象で、カウンターで預ける受託手荷物には適用されません。マウスウォッシュも「口腔洗浄液、口中清涼剤」として同じリストに載っています。
空港で止められないために、事前に確認することはありますか。
本体の電池の種類と、歯みがき粉の容量です。充電式ならリチウムイオン電池、乾電池式なら非危険物として扱われます。歯みがき粉とマウスウォッシュは、国際線なら100ml以下の容器に入れ替えるか、預ける荷物に入れます。なお国土交通省の液体物リストは、量的制限対象品についての具体的な判断は最終的に保安検査場における検査員が行うとしています。機種や航空会社によって案内が異なる場合があるため、迷うものは搭乗する航空会社に確認してください。
出典
- 国土交通省「航空機への危険物の持込みについて」および「機内持込・お預け手荷物における危険物について」(2026年8月31日閲覧)
- 国土交通省「危険物であっても航空機内への持込み又はお預かりができるもの」(航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示・令和8年4月24日適用)
- 国土交通省「機内への持込み又はお預け手荷物に制限がある品目の代表例」
- 国土交通省 航空局「国際線の客室内への液体物持込制限について」概要および「量的制限の対象となる液体物のリスト」(平成27年10月1日現在)
※ 本記事は上記の公表資料をもとに整理したものです。取扱いは航空会社や路線によって異なる場合があり、量的制限対象品についての具体的な判断は保安検査場の検査員が行います。搭乗前に利用する航空会社の案内をご確認ください。
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