6月4日から10日は「歯と口の健康週間」です。毎日しっかり歯を磨いているのに虫歯ができてしまった——そんな経験はありませんか。虫歯は、いくつかの条件が重なったときにゆっくりと進む病気です。この記事では、虫歯ができる仕組みと、今日から見直せる予防の3本柱を、厚生労働省e-ヘルスネットや日本歯科医師会の公開情報をもとにやさしく解説します。
- 虫歯を作る要因は「歯の質」「細菌」「食物(砂糖)」の3つに整理される(厚労省e-ヘルスネット)
- 細菌が糖から作る酸で歯が溶ける「脱灰」と、唾液が歯を修復する「再石灰化」のバランスが崩れると虫歯になる
- ごく初期の虫歯は自覚症状がほとんどなく、崩壊した歯質は自然には元へ戻らない
- 予防の柱は「毎日の歯磨き」「フッ素の活用」「だらだら食べを避ける食習慣」の3本立て
Contents
虫歯ができる3つの条件と「時間」
「歯と口の健康週間」は、6月4日から10日まで、厚生労働省・文部科学省・日本歯科医師会・日本学校歯科医会が協力して実施している週間です。「6(む)4(し)」にちなんだこの機会に、まずは虫歯がどうしてできるのかを整理しておきましょう。
厚生労働省e-ヘルスネットは、虫歯(う蝕)を作る要因を「歯の質」「細菌(むし歯原因菌)」「食物(砂糖)」の3つに整理しています(e-ヘルスネット「むし歯の予防法(総論)」)。歯の表面の歯垢(プラーク)にひそむ細菌が、飲食物に含まれる糖分を分解して酸を作り、その酸が歯の表面のミネラルを溶かします。この3つの条件が重なったときに、虫歯が発生しやすくなるという考え方です。
さらに、この3つに「時間」を加えて考えると理解しやすくなります。糖分をとる回数が多く、歯が酸にさらされる時間が長くなるほど、歯が溶ける時間も長くなるためです。つまり虫歯は、「虫歯になりやすい歯の質」「原因となる細菌」「エサになる糖」が、「長い時間」重なったときに進んでいく、と整理できます。
カギは「脱灰」と「再石灰化」のバランス
虫歯の成り立ちを理解するうえで最も大切なのが、「脱灰(だっかい)」と「再石灰化(さいせっかいか)」という2つの現象です。
e-ヘルスネットによると、プラーク中の細菌が糖分を分解して作り出した酸によって、歯を構成しているカルシウムなどのミネラル成分が溶け出す現象を「脱灰」といいます。一方で、唾液は酸を中性に近づけて歯を守るとともに、カルシウムやリン酸を含んでおり、これらが溶け出した歯を修復します。これが「再石灰化」です。口の中では、この脱灰と再石灰化が絶えず繰り返されています(e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」)。
問題は、このバランスが崩れたときです。糖分の摂取が頻繁で、酸を中和したり歯を修復したりする働きが間に合わず、脱灰が優勢になった状態が続くと、その部分はやがて崩壊します。これが虫歯です。逆に言えば、再石灰化を後押しし、脱灰に傾く時間を減らすことが予防の基本になります。
脱灰(歯が溶ける)
細菌が糖を分解して酸を作る
酸で歯のミネラルが溶け出す
※糖をとる回数が多いと脱灰が優勢に
再石灰化(歯が修復)
唾液が酸を中和する
唾液のカルシウム・リンが歯に戻る
※フッ素は再石灰化を後押しするとされる
この2つがつり合っているうちは、歯は健康を保てます。だからこそ、細菌と糖を減らし、唾液やフッ素の働きを味方につけて再石灰化に傾けることが、虫歯予防の考え方の中心になります。
虫歯の進行段階:初期は自覚症状がない
虫歯はゆっくりと進行する病気で、e-ヘルスネットは「痛みを伴い、自然治癒をしないため治療が必要になる」と説明しています。やっかいなのは、ごく初期の段階では痛みなどの自覚症状がほとんどないことです。一般に、虫歯は次のような段階を経て進むと整理されています。
| 段階 | 歯の状態 | 自覚症状の目安 |
|---|---|---|
| ごく初期 | 表面のミネラルが溶け始め、白く濁る(まだ穴は空いていない) | ほとんどない。再石灰化で戻る可能性がある段階 |
| エナメル質の虫歯 | 歯の表面のエナメル質に小さな穴が空く | 痛みは少ないことが多い |
| 象牙質の虫歯 | エナメル質の内側の象牙質まで進む | 冷たいものや甘いものでしみることがある |
| 神経まで進んだ虫歯 | 歯の神経にまで細菌が達する | ズキズキとした痛みが出やすい |
| さらに進んだ虫歯 | 歯の根元にまで達し、病巣ができることも | 歯を抜かなければならないこともある |
e-ヘルスネットは、「むし歯により崩壊した歯質は、再石灰化等により自然に回復することはありません」と明言しています。つまり、穴が空いてしまった虫歯は自然には治らず、歯科での治療が必要になります。だからこそ、脱灰でとどまっているごく初期のうちに気づき、進行させないことが重要です。しみる・痛むといった症状が続く場合は、自己判断せず早めに歯科医院を受診してください。
予防の3本柱:歯磨き・フッ素・食習慣
虫歯を作る「歯の質」「細菌」「食物(砂糖)」の3つの要因は、それぞれに対応した予防法があります。e-ヘルスネットは、予防法を「フッ化物応用とシーラント」「歯みがきの励行」「糖分を含む食品の摂取頻度の制限」に整理し、これらをバランスよく組み合わせることが最も効果的だとしています。家庭でできる予防を、3本柱として押さえておきましょう。
1. 毎日の歯磨きで磨き残しを減らす
歯磨きの目的は、酸のもとになる歯垢(細菌のかたまり)を取り除くことです。ただしe-ヘルスネットは、奥歯の溝や歯と歯の間など最も虫歯になりやすい部位は歯みがきだけでは防ぎきれないとも指摘しています。子どもの虫歯の8割以上が奥歯の溝から発生しているという報告もあり、毛先が届きにくい場所こそ、磨き残しを減らす意識が必要です。磨く順番を決める、歯と歯の間はデンタルフロスも併用するなど、「落としきる」工夫が効いてきます。
2. フッ素を毎日の習慣に取り入れる
フッ素(フッ化物)は、再石灰化を促進し、歯質の虫歯に対する抵抗力を高める働きがあるとされ、e-ヘルスネットは身体の抵抗力を高める方法として最も重要と位置づけています。最も身近なのがフッ化物配合の歯磨き粉で、日本での市場占有率は2021年に93%を超えています。使うときは、うがいを少量の水で1回にとどめ、口の中にフッ素を残すのがコツとされています。歯磨き粉の選び方や使い方は電動歯ブラシに歯磨き粉は必要?もあわせてご覧ください。
3. だらだら食べを避ける食習慣
糖分をとる「回数」が多いほど、口の中が酸性に傾く時間が長くなり、脱灰が優勢になりやすくなります。ポイントは、量そのものよりも頻度です。甘い飲み物を少しずつ飲み続ける、間食が多いといった「だらだら食べ」は、脱灰の時間を長引かせます。おやつは時間を決める、糖分を含む飲み物をだらだら飲まない、といった工夫が予防につながります。なお「食後いつ磨くか」というタイミングについては歯磨きのタイミングで詳しく解説しています。
定期検診で「自分では気づけない虫歯」を防ぐ
ここまで見てきたように、虫歯は初期には自覚症状がなく、進行してからでは自然には治りません。だからこそ、家庭のセルフケアと合わせて、歯科医院での定期検診が大切になります。定期検診では、自分では気づけないごく初期の虫歯や磨き残しをチェックしてもらえるほか、歯垢や歯石の除去、自分に合った磨き方のアドバイスも受けられます。
「歯と口の健康週間」は、こうした予防習慣を見直すよい機会です。毎日のセルフケアと定期検診をどう組み合わせればよいかは、予防歯科・セルフケアと定期検診で整理しています。しみる・痛むなどの症状がある場合は、週間を待たずに早めにかかりつけの歯科医院へ相談しましょう。
虫歯は「歯の質・細菌・糖」が時間をかけて重なり、脱灰が再石灰化を上回ったときにできる。予防の柱は、磨き残しを減らす歯磨き・再石灰化を助けるフッ素・だらだら食べを避ける食習慣の3本立て。そこに定期検診を加えれば、初期の虫歯にも早く気づけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 虫歯はどうしてできるのですか?
歯の表面の歯垢(プラーク)にひそむ細菌が、飲食物の糖分をもとに酸を作り、その酸が歯のミネラルを溶かすこと(脱灰)で虫歯が始まります。厚生労働省e-ヘルスネットは、虫歯を作る要因を「歯の質」「細菌」「食物(砂糖)」の3つに整理しています。この脱灰と、唾液による修復(再石灰化)のバランスが崩れて脱灰が優勢になったときに虫歯が発生します。
Q. 歯を磨いていれば虫歯は防げますか?
歯ブラシが届く場所の虫歯は歯みがきで防げますが、奥歯の溝や歯と歯の間など、最も虫歯になりやすい部位は歯みがきだけでは防ぎきれないとされています。e-ヘルスネットは、こうした部位の予防にはフッ化物の利用や糖分の摂取制限を組み合わせる必要があると説明しています。歯みがき・フッ素・食習慣を組み合わせることが大切です。
Q. 初期の虫歯は自分で気づけますか?
ごく初期の虫歯は歯の表面が白く濁る程度で、痛みなどの自覚症状がほとんどないため、自分では気づきにくいのが一般的です。虫歯はゆっくり進行し、崩壊した歯質は自然に元へは戻らないとされています。早期に見つけるためにも、定期的な歯科検診が役立ちます。
Q. だらだら食べは虫歯によくないのですか?
糖分をとる回数が多いほど口の中が酸性に傾く時間が長くなり、脱灰が優勢になりやすいと考えられています。e-ヘルスネットも、糖分を含む食品の摂取頻度を制限することを予防法の一つに挙げています。量そのものよりも、だらだらと頻繁に食べ続けないことが予防のポイントとされています。

